「新規事業は、正しい順番で進める。」SPARK 基礎セミナー①開催レポート
2026年7月14日、豊田市の新規事業創出プログラム「SPARK」で、基礎セミナー「新規事業開発の正しい進め方」を開催。段階ごとに問いを絞る考え方と、顧客検証の要点をレポートします。
2026年7月14日、ものづくり創造拠点SENTANで、豊田市の新規事業創出プログラム「SPARK」基礎セミナー①を開催しました。
テーマは、「新規事業開発の正しい進め方」。講師に株式会社アルファドライブ 取締役兼グループ執行役員COOの古川央士を迎え、新規事業の始まりから、会社の次の柱へ成長していくまでの道のりを、一つのチームの物語をたどりながら学びました。
開催概要
- 開催日
- 2026年7月14日(火)
- 会場
- ものづくり創造拠点SENTAN
- テーマ
- 新規事業開発の正しい進め方
- 講師
- 古川 央士(株式会社アルファドライブ 取締役兼グループ執行役員COO)
新規事業を「断崖絶壁」にしない
新規事業に期待しながら、最初の審査で完成度の高い事業計画や大きな売上目標を求める。企業の中では、そんな矛盾がしばしば起こります。
講義では、この状態を「断崖絶壁の山」に例えました。頂上だけを示されても、そこへ至る足場がなければ登ることはできません。必要なのは、事業の成長をいくつかの段階に分け、それぞれの段階で確かめることを明確にすることです。
その段階で、いま確かめるべきことに集中する。
顧客も課題も定まっていない段階で、市場規模や精緻な収益計画をつくっても、その数字にはまだ十分な根拠がありません。一方、顧客の課題を確かめる時期に、製品を完成させる必要もありません。先の論点を急いで埋めるのではなく、今の段階に必要な問いへ集中することが、新規事業を前に進めます。
「困っている」という言葉より、行動を見る
事業の出発点は、助けたい顧客と、その人がお金を払ってでも解決したい課題を見つけることです。
ただし、顧客が「困っている」と話しただけでは、課題が十分に確かめられたとはいえません。すでに別のサービスを試している、予算を使って対策している、それでも解決できずにいる。講義では、こうした顧客の行動に表れた事実を見ることの重要性が示されました。
既存の製品やサービスでは、なぜ解決できなかったのか。どの場面で不便が残っているのか。顧客の行動を具体的にたどることで、つくるべきものの輪郭が見えてきます。
これは、ものづくり企業の新規事業にも共通します。自社の技術や設備から考え始めること自体は間違いではありません。しかし、それを誰の、どんな困りごとにつなげるのかが定まらなければ、事業にはなりません。技術の強みと顧客の現場を往復しながら、事業の仮説へ変えていく必要があります。
つくる目的は「完成」ではなく「検証」
顧客の課題が見えてくると、次は解決策を試します。ここで起こりやすいのが、試作品をつくること自体が目的になることです。
まだ仮説の段階で、多くの時間と費用をかけた製品をつくっても、顧客に求められなければ、その投資は戻りません。大切なのは、見栄えのよい完成品ではなく、確かめたい問いに答えられる最小限の方法を選ぶことです。
講義では、専用システムを開発する代わりに、既存のツールや表計算ソフト、AIを組み合わせて価値を確かめる例が紹介されました。AIによってウェブサイトや試作品を短時間でつくれるようになった今も、原則は変わりません。つくれるからつくるのではなく、顧客の反応を早く得るためにつくる。その線引きが重要です。
強い意志は、最初からなくてもいい
長い道のりを進む新規事業には、「なぜ自分が取り組むのか」という意志が欠かせません。一方で、最初から人生を懸けたいテーマを持っている人ばかりではありません。
講義の最後に伝えられたのは、意志は行動の中で育つということでした。
課題を抱える人に会い、その現場を知る。新規事業の実践者に会い、挑戦の熱量に触れる。小さな興味から一歩を踏み出し、心が動く体験を重ねるうちに、「この人を助けたい」「この課題を何とかしたい」という思いが強くなっていきます。
テーマが決まってから現場へ行くのではなく、テーマを見つけ、育てるために現場へ行く。新規事業の最初の一歩は、机の上で答えを出すことではなく、気になる相手のところへ足を運ぶことなのかもしれません。
質疑応答では「市場」と「社内目標」が論点に
質疑応答では、実践へ踏み出す際に多くの企業が直面する問いが交わされました。
- 顧客の課題を深く見ることと、市場規模を見極めることを、どの順番で進めればよいか
- 相場を上回る高い事業目標を求められたとき、経営層とどのように対話すればよいか
市場規模は、顧客数と顧客単価が見えなければ精度を上げられません。まず顧客の課題と支払意思を確かめ、解決したときのインパクトも見ながら、後の段階で市場性を検証していく。高い目標を掲げる場合には、目標だけでなく、それに見合う期間・予算・体制もセットで設計する。講義の内容を、社内の投資判断へどうつなげるかを考える時間になりました。
学びを、自社のテーマへつなげる
今回のセミナーは、SPARKでこれから続く学びと実践の「地図」にあたる回でした。
8月以降は、顧客と課題の見つけ方、顧客ヒアリング、AIを使った仮説検証を扱う基礎セミナーに加え、オープンイノベーションや自社技術を起点に事業アイデアを考えるワークショップを開催します。
新規事業に関心はあるものの、テーマがまだない方も参加できます。まずは気になる回に参加し、自社の現場で気になっていることを、事業の種へ変えるところから始めてみませんか。
